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例外があるとすれば、広告とマーケティングで、これは現存の需要を満たすというより、需要曲線を修正しようという意図をもっているからだ。
しかし、こうした活動もいま私がこの言葉を定義したような意味ではいつも相互作用性をもっとは限らないし、また各企業が一部の経営資源を需要拡大のために投入し、一部を需要を満たすために使うことで均衡を確立するのを妨げるものでもない。 問題が金融市場とマクロ経済にからんでくると、情勢は一変する。
期待が大きな役割を演じるようになり、その演ずる役割は相互作用性をもつ。 参加者は自分たちの期待をもとに決定をくだし、彼らが予想しようとする将来は逆に、彼らが今日下そうとする決定に左右されることになる。

異なる決定が異なる将来を生み出していく。 したがって、もろもろの決定はなにか独立して与えられたものと関係しているわけではない。
このことは決定と決定のもたらす結果の双方において、ある不確定性の要素を生み出すことになる。 この不確定性は理論的には、完全なる知識があるという勇ましい仮説を立てれば排除できる。
しかし、この主張は守りきれない。 なにしろそれは人々に選択の自由があるという事実を無視しているのだから。
完全なる知識とはそもそもなにについてなのか。 すべての参加者のすべての選択についてとでもいうのか。
こうした選択が結果を左右し、その結果がまた選択の仕方いかんで決まる以上、そんなことは不可能である。 したがって、参加者は結果として生じる均衡がどんなものかを知るだけでなく、それを意図していかねばならず、同時にまた、他のすべての参加者もそれを知り、かつそれを意図していることを知っていなくてはならない。
これはかなり無理な仮定の組み合わせであるが、おおまじめな顔で提議されてきたのである。 われわれは完全なる知識は入手不可能であり、不確定性の要素は不可避であることを認識しなくてはならない。
これは均衡の概念が現実の世界には不適切だということだろうか。 必ずしもそうとは言えない。
均衡を動く目標に転じさせるには、なにかほかのことが発生しなくてはならない。 期待がその関係する将来に影響を及ぼすようにならなくてはならない。

そのうえ、その影響はそうした期待に変化をもたらすような類のものでなくてはならず、その期待はまた、将来を変えるものでなくてはならない。 このように自己に向けられ、かつ自己に影響するフィードバックのメカニズムはいつも行動に転化されるわけではないが、無視できないほど頻繁に生じている。
これは金融市場には固有のもので、そこでは現在の価格の変化が、現在の価格のなかに織り込みずみとみられる将来の価格を変えることができる。 これはまた、マクロ経済政策を立案するときの特徴となっている。
マクロ政策は金融市場の動向に左右され、また逆に、金融市場を通してその影響力を行使できるからである。 というわけで、金融市場の動きとマクロ経済の成り行きを均衡分析によって説明しようとするのは間違っていると思われる。
これこそがまさに経済理論が、あらゆる不均衡の現出をいわゆる外因性のショックによるものとして説明しようとしてきたことなのである。 この蛮勇は私に、惑星が予定の軌道を通らないと、追加の円を描いて天体の動きを説明しようとしたプトレマイオスのやり方を思い起こさせる。
実際には、市場の参加者も規制者も均衡が幻影であることを認識している。 理論と実際がこうもかけ離れていて、錬金術その他いろいろな魔術が仕掛けられる余地を多分に残している分野はめったに見あたらない。
私にはそれがわかっている。 なぜなら、私は特にアジア諸国で、魔法使いとしての評判が高く、したがって私が故意に避けない限り、市場を操作してもいいことになっているからだ。
アラン・グリーンスパン(アメリカ連邦準備理事会議長)の議会証言は、とりわけ彼の「市場の不合理な繁栄」という警告は、名称こそ使ってないが私のいう相互作用性をあらゆる面で思い起こさせた。 過去の相互作用的な錬金術の最大の実行者は日本の大蔵省のなかにいたはずだが、いまでは彼らの手品の鞄の中はからっぽである。
ここで告白しなくてはならないが、私は効率的市場論や合理的期待仮説といったいまはやりの理論には精通していない。 私はこれらが的外れであると考えており、あえて勉強しようとはしなかった。
こうした理論なしでも私は十分うまくやっていけるように思ったからだ。 実際、最近のロング・ターム・キャピタル・マネジメント(TCM)の破綻をみれば、おそらくそれでよかったのだろう。
このヘッジファンドはマネジャーが近代的均衡理論を駆使して利益を狙い、その裁定取引の戦略は、部分的にはオプションの価格決定に関する理論的研究によって一九九七年のノーベル経済学賞を共同受賞した学者が開発したものだった。 金融市場がどう機能するかを説明するはずの近代的な理論がまったく役に立たないことを、金融市場で成功している参加者の一部が発見していた事実は、それ自体この理論の痛烈な批判と受け取っていい。
しかしそれは理論の不適切性を公式に立証するところまではいっていない。 その立証ではロング・ターム・キャピタル・マネジメントの失敗はもっとはるかに決定的である。

私は均衡の概念は現実の世界の欠陥を照らし出すのにきわめて有用であるとみている。 われわれは均衡概念が失敗例として利用できなかったら、動的不均衡の理論を構築できなかっただろう。
私は経済学には限界があることを除けば、経済学自体に関しては異議があるわけではない。 経済学は市場の展開と需要、供給の状況との間に相互作用的なつながりがあることを考慮の対象からはずし金融市場とマクロ経済の展開を理解するには、新しい理論的枠組みが必要となる。
われわれは均衡の概念を相互作用性の概念で補足する必要がある。 相互作用性は均衡理論の結論を公理のシステムとして無効にさせるものではないが、均衡理論が考慮の外においてきた次元のものを加えていく。
それは平面幾何学を地球は丸いという考え方と組み合わせるようなものだ。 均衡理論は時間をている。
超越して通用する普遍的一般論を提供しようとしている。 相互作用性は歴史的な次元を追加する。
時間の矢は、均衡に向かう傾向にあるかもしれないし、そうでないかもしれない歴史的なプロセスを導入する。 これで実際の世界は様変わりとなる。
私は次章で金融市場を相互作用的で歴史的な観点からとらえる議論を展開するが、その前にまず価値の問題を検討することで経済理論に対する私の批判論を完結させたい。 経済理論は市場参加者の価値観と選好を所与のものとする。
そういう方法論的な取り決めを口実にして経済理論は価値についてのある種の主張を暗黙のうちに導入する。 このなかで最も重要なのは、市場価値のみを考慮の対象とすべきだという主張である。

すなわち、自由な交換の場で、ある市場参加者が他の市場参加者に喜んで支払うものを決める際に、彼または彼女の頭のなかに入ってくる考慮要因だけを検討すればいい、というものだ。 この主張は目的が市場価格を決めることにあるのなら正しいといえるが、市場の行動には現れない広い範囲の個人および社会的な価値を無視している。

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